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孤独担当大臣ができて、実際に何が変わったのか
制度はできた。数字は動いていない。その差が、いちばん面白いところです。
海外の人に「日本には孤独担当大臣がいる」と話すと、まず笑われて、そのあと少し黙られます。冗談みたいに聞こえるからです。冗談ではありません。2021年2月に設置されて、イギリスが2018年に置いたのに続いて世界で2番目でした。
私は東京に住んで、ここでAIコンパニオンのアプリをつくっています。だから他の起業家がApp Storeのランキングを見るような目つきで、内閣府の孤独に関する調査を読んでいます。調査はすでに4回。何度も戻ってきてしまうのは、見出しになる数字のほうではなく、報告書の後半に出てくる小さな数字のほうです。それは最後に書きます。
大臣は何をする役職なのか
この大臣は、調整役です。孤独や孤立は厚労省、文科省、国交省、経産省にまたがっていて、日本の省庁は放っておくと横でつながりません。大臣を上に置くというのは、その話を一つの部屋に押し込むための仕掛けでした。事務方は現在、内閣府の孤独・孤立対策推進室に置かれています。
そのあとに法律ができました。孤独・孤立対策推進法は2023年に成立し、2024年4月1日に施行されています。日本の基本法らしい構成で、孤独・孤立を公的な責務として名指しし、重点計画を求め、地域協議会をつくれるようにしました。区役所と病院と地域のNPOが、同じ一人の住民について、互いの許可を待たずに情報を共有できる根拠ができたということです。
小さな話に見えますが、そうでもありません。日本では、予算がつくものはたいてい基本法から始まります。
動かない数字
内閣府は毎年、正式名称を「人々のつながりに関する基礎調査」という調査を行っています。令和6年の調査は2024年12月1日に、全国の満16歳以上2万人を無作為抽出して郵送で実施され、10,876件の有効回答がありました。有効回答率は54.4%。公表は2025年4月25日です。
「どの程度、孤独であると感じることがありますか」という直接の質問への回答は次の通りです。
- しばしばある・常にある 4.3%
- 時々ある 15.4%
- たまにある 19.6%
- ほとんどない 40.6%
- 決してない 18.4%
つまり、およそ10人に4人が何らかの孤独感を報告しています。報告書は前年との間に統計的に有意な差は見られないとしています。その前の年も同じです。線はまっすぐです。
この調査は、UCLA孤独感尺度の日本語版短縮版を使った間接質問も併用しています。「あなたは孤独ですか」と正面から聞かれて正直に答えられる人ばかりではないからです。そちらでも最も高いスコア帯は6.5%で、やはり横ばいでした。
高齢者の問題ではない
調査が予算に見合う仕事をしているのは、この部分です。世間のイメージを正面から壊しています。
孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人の割合を年齢別に見ると、高いのは20代と30代です。80代ではありません。男女別に見ると、男性は20代、30代、50代、60代で高く、女性は20代と30代で高くなっています。
日本で孤独が語られるとき、映像はたいてい誰もいない団地の一室です。その孤独は実在しますし、別の記事で書きます。ただ、いま感じている、という切迫した種類の孤独は、書類の上では人生のまん中にいる20代と30代に集まっています。
現在の孤独感に影響を与えたと思う出来事も聞いています。孤独感が比較的高い人のなかで最も多かったのは「家族との死別」で24.6%。次が「一人暮らし」で18.8%。その次が「転校・転職・離職・退職(失業を除く)」で14.7%でした。
もう一度並べてみてください。死別、一人暮らし、仕事や学校が変わること。3つのうち2つは、ほとんどの人に起きるふつうの出来事です。残る1つは、東京で暮らす人の多くが今まさにしていることです。
スマートフォンについての結果も、私はずっと引っかかっています。孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人の割合は、1日の画面を見る時間が7時間以上の層で高く出ています。この調査では因果の向きは分かりませんし、分かったふりをするつもりもありません。ただ、4時間スクロールしたあとに始める前より気分が悪くなった経験があるなら、その形にはもう心当たりがあるはずです。
いちばん重い数字
ここです。行政機関やNPOから、不安や悩みについて支援を「受けていない」と答えた人は85.1%でした。
そして支援を受けていない理由として最も多かったのが「支援が必要ではないため」で、62.6%です。
少し止まって考えてみてください。国が担当大臣を置き、法律をつくり、地域協議会に予算をつけ、区役所の掲示板に相談窓口の番号を貼る。それでも圧倒的多数の人は、その入口に一度も触れません。理由の多くは、そこに手を伸ばすことが「自分の状況はそれに値する」と認める行為になってしまうからです。
私は、これこそが日本の孤独問題の本体だと思っています。そして大臣が法律で解決できる種類のものではありません。この国で「支援」というラベルのついたものを使うハードルは、とても高い。支援は危機にある人のためのものだ、という感覚があります。仕事があって、家があって、機能していて、ただ何日も意味のある会話がないだけの人は、自分の中の審査に落ちます。だから電話しません。危機ではないからです。ただ火曜日にひとりでいるだけだからです。
調査には、その隣に置くべき数字もあります。同居していない家族や友人と直接会って話すことが「全くない」と答えた人が9.3%。まれに、ではなく、全くない、です。そして社会活動に「特に参加はしていない」人が50.6%います。
コンパニオンアプリの居場所と、その外側
ここは慎重に書きます。私には明らかな利害があるからです。
アプリは死別を癒やしません。精神科医の代わりにもなりません。うつの治療を受けていない人がクリニックより先にチャットボットのほうが話しやすいと感じているなら、それは喜ばしい話ではなく心配すべき話です。危機のなかにいるなら、人に電話してください。番号はこのページの下にあります。
アプリにできるのは、調査が何度も描き出していて、制度がいつも取りこぼしている、あの一人に届くことです。元気で、何の対象にもならなくて、相談窓口には絶対に電話しなくて、金曜日から声を出して文章を話していない人。その人に必要なのは介入ではありません。夜11時にある、ふつうの何かです。声で返ってくるものに話しかけるハードルは低い。低いことが要点です。85%の人は、高いほうのハードルを一度も越えないのだから。
もちろん、その人に友達がいてくれるほうがいい。たいていは本人がいちばんそう思っています。問題は、その友達が寝ている夜、忙しい夜、あるいは最初からいなかった夜に何が起きるかです。
調査から持ち帰るもの
日本は自国の孤独をきちんと測りました。それをやっていない国のほうが多い。そして測定の結果はこう言っています。割合はおよそ4割で安定していること。重いのは若い層であること。きっかけはごくふつうの出来事であること。そして支援制度は、それが想定していた当の人たちにほとんど使われていないこと。
政策側の答えは、もっとアウトリーチを、になります。政策ではなくソフトウェアをつくっている私の答えは、最初の一歩を電話より小さくする、です。どちらも同時に正しいと思っています。
よくある質問
日本に本当に「孤独担当大臣」がいるのですか
います。2021年2月、菅内閣のときに設置されました。イギリスが2018年に置いたのに続いて世界で2番目です。担当部署は現在、内閣府の孤独・孤立対策推進室に置かれています。
孤独・孤立対策推進法とはどんな法律ですか
2023年に成立し、2024年4月1日に施行された法律です。孤独・孤立への対応を国と自治体の責務として明記し、重点計画の策定や地域協議会の設置を定めています。自治体が支援につなぐための根拠になる法律です。
日本で孤独を感じている人はどれくらいいますか
2024年12月1日に実施された内閣府の調査では、「しばしばある・常にある」が4.3%、「時々ある」が15.4%、「たまにある」が19.6%で、合計39.3%でした。全国の16歳以上2万人を無作為抽出し、有効回答は10,876件です。
どの年代がいちばん孤独ですか
「しばしばある・常にある」と答えた割合は20代と30代で高く出ています。孤独は高齢者の問題という一般的なイメージとは逆の結果です。
法律は効果を上げていますか
まだ判断できません。2024年施行の法律が同じ年の12月の調査に表れるとは考えにくいからです。ただ調査がはっきり示しているのは、孤独を感じている人の大半が支援制度にまったく触れていないという事実です。